都「財政再建推進プラン」に対する見解
都民の批判をあびた「財政健全化」路線と職員犠牲をさらに大規模に押し進め、政府・財界が求める新たな「東京改造」に道をひらく「財政再建推進プラン」
東京都「財政再建推進プラン−都財政自主再建への道−」に関する見解
1999年8月10日 自治労連都職労中央執行委員会
1 「財政再建推進プラン」の策定目的
  都は7月29日、「財政再建推進プラン」(以下「プラン」と略)を発表した。概要は別紙のとおりである。
 これは「自主的な財政再建に向けての道筋を示すもの」としているが、すでに99年度予算に計上されている800億円の「財政健全化債」の許可を自治省から得るための計画書であることに最大の目的があり、従って、給与をはじめ経常経費を大幅に削減することを狙ったものである。
 都は同時に「行政改革の取組の基本方向及び管理団体改革の取組について」を発表し、緊急に取組むべき事項の一部が「プラン」に盛り込まれていること、11月の「危機突破・戦略プラン」や2000年秋に策定予定の「都市構想」に合わせて、新しい行政改革大綱である「都政改革ビジョン」を策定するとしている。
 また、「プラン」の2000年度予算への具体化として、10%から15%減を求めた「平成12年度の予算の見積りについて」、事業の廃止・縮小や業務委託などによる削減、管理事務部門の5%削減(計画期間中に10%削減)を指示した「平成12年度組織および職員定数方針」も示されている。
2 全体的な特徴と問題点
 (1) 財政危機の原因を明らかにせず責任を回避
 財政危機の原因は、バブル経済崩壊後の厳しい税収減のもとでの都債の大増発や基金の取崩しにより大規模公共事業を続けてきたことにある。しかし「プラン」は一般的に「歳出水準を維持してきた」「結果として都債残高は・・・急増するとともに、基金もほとんど底をつき・・・」と述べるだけでその真の原因にまったく触れようとしないばかりか、「結果として」などと述べ、財政運営の失敗の責任を回避している。
 (2) 青島都政の「視点」を継承しつつも、はるかに大規模な都民・職員犠牲の計画
 「プラン」は「基本的視点」として、「関与すべき分野や範囲の見直し」「民間又は国及び市町村との役割分担の明確化」「聖域なしの施策の選択・再構築」「スリムで効率的な執行体制の確立」を掲げている。これらは「コーディーネーター論」に基づいた青島「行革」「財政健全化計画」を継承したものであるが、第四の視点として「地方主権を確立する視点から税財政制度の改善を図る」ことを掲げ、「具体的方策」で金額も明示している点は注目される。
 しかし後で見るように、今回の「プラン」は、都民犠牲の前提として職員犠牲を位置づけながら両者をセットにした、青島都政をはるかに上回る規模と内容をもつ大改悪計画であることに大きな特徴がある。
 (3) 「財政再建団体への転落」問題について
 財政危機の陥っているのは東京都だけではない。公債費負担比率が警戒ラインとされる15%をこえる自治体は全自治体の56.3%、1847団体、うち道府県は31団体にのぼっている。経常収支比率も大阪と神奈川は100%をこえ、愛知・福岡・千葉・岡山では95%をこえている。 (97年度の数値。東京都は公債費負担率9.4%、経常収支比率96.1%)従って、仮に東京都が「財政再建団体」に転落する事態となれば、全国の少なからぬ自治体もまた同様であろう。
 また、政府・自治省や財界は、現在の不況対策・経済政策の柱のひとつとして大都市圏の都市基盤・産業基盤整備を位置づけており、東京都をはじめ主要道府県や大都市を「財政再建団体」に転落させ、公共事業に急ブレーキをかけるような対応はとり得ないはずである。現に自治省は、法人税の交付税率引上げや東京都など不交付団体への「特例交付金」の交付、起債比率の高い自治体に対する政府系資金の繰上げ返済の承認など、まだ端緒的ではあるが対策を講じることを余儀なくされている。
 「プラン」は第一の目標として「財政再建団体への転落の回避」を掲げているが、「富裕団体」である都が「財政再建団体」となることは完全な制度矛盾・機能不全を意味することと、また最近の政府の動向を見るならば、「転落の危機」を声高に叫ぶことは都民と職員に対する「脅し」の意味あいが強いと言わなければならない。
 (4) 信頼性に欠け、不確定・不明朗で無理な計画
 第一に、6月23日に発表された「危機に直面した東京の財政」では2003年度の財源不足は7600億円とされていた。ところが「プラン」の財政収支見通しでは、新たに都税の伸びを見込み、同年度の不足額は6300億円としている。わずかひと月あまりで1300億円も違ってしまうのではその信頼性に疑問を持たざるを得ない。
 第二に、目標年度までの3年間については「臨時的・時限的な、いわば『つなぎ』ともいえる財源対策を講じる必要がある」としている点である。
 さしあたって2000年度には、6200億円の財源不足見通しに加えて、98年度の赤字1068億円があり、合計7268億円が不足する計算となる。「財政再建団体転落」の限度額を仮に2500億円とすると、回避するためには約4700億円の財源確保が必要となる。「プラン」の前倒しにより2000年度に仮に計画の3分の1を実施したとしても約2000億円であり、また差引き2700億円も不足する。
 「臨時的・時限的」な対策として「給与削減」と「未利用財産の売却」の二つが掲げられているが、金額も明示されていない上、巨額な財源不足に見合うものではない。
 第三に、計画期間を2000年度から2003年度までの4年間に設定しいることは、石原知事が予算編成する期間という意味しかもたず、真に合理的な期間設定とはとうてい言いがたい。現在の都財政危機がバブル経済とその崩壊、戦後最悪の大不況の下で生じて来た言わば根の深い長期にわたる課程の結果としてある以上、わずか4年で解決できるほど簡単なものではない。
 (5) 第三セクターを含めた外郭団体の経営資料の公開こそ先決
 新しい試みとして「バランスシート」の「試作品」が提示されたが、情報公開の一助とはなっても、自治体の財政運営にとってどれほど役立つかは大いに疑問がある。なぜなら、投下資本より大きい資本を回収することを目的としている民間営利企業と、税金などの収入を自治体の本来の役割に照らして適切・効果的に支出・消費することを目的としている自治体とではその財政運営原理が本質的に異なっているからである。
 むしろ、知事も選挙中に同意した、第三セクターを含めた種々の外郭団体の経営資料を公開することこそ緊急に行うべきである。
3 具体的方策の問題点
  「具体的方策」の柱は「内部努力」「施策の見直し」「歳入確保」「税財政制度の改善」の4つであるが、そこに盛込まれた項目のほとんどが、都民と職員の生活にとってかつて無い規模と内容で重大な影響を及ぼすものとなっている。
 (1) いっそう深刻な健康破壊をまねく定数削減と、人勧制度や条例さえふみにじる給与の削減
 79年以来の数次にわたる「行革」で、知事部局等の職員は58,128人から44,709人(しかもこの中には3千名を超えるとみられる、実員を伴わない「保留定数」がカウントされている)へと13,419人も減らされてきた。削減率は23.1%で、削減対象から外されている警視庁・消防庁はもとより、学校職員(16.0%)や公営企業(22.2%)の削減率を上回っている。その結果、職場では過密労働と恒常的残業が広がり、不払い残業さえ横行している。在職死亡率も増加して国家公務員の約2倍に達している。
 一方、99年度一般会計の知事部局等の職員の人件費は2640億円、人件費総額1兆2748億円の20.7%に過ぎず、警視庁が3439億円(27.0%)、消防庁が1396億円(11.0%)、残りが教育庁(学校職員)となっている。
 当局は、削減目標5000人の半数程度を知事部局等に割振る計画とされているが、こうした現状をふまえるならば、職員の命と健康をないがしろにし、人件費・定数の構成を見ない全く理不尽な措置であり、断じて認めるわけにはいかない。
 新規採用の抑制は、職員の年齢構成の歪みをいっそう激しくし将来の都政運営に大きな支障をもたらすと同時に、若年層の雇用悪化が深刻な現在、行うべきではない。
 「つなぎ」の財源対策として給与の削減があげられているが、公務員給与は法律・条例に基づき、不当に労働基本権を奪っていることの「代償措置」としての人勧制度によって、決められているものである。そして労働者にとっては最も基本的な労働条件であり、労使交渉に委ねられているものである。こうした性格をもつ公務員給与を、信頼性に欠け不確定・不明朗な計画の帳尻合わせの手段とし、勝手に削減することは、法を踏みにじる暴挙であり、とても容認できるものではない。
 「管理事務費等の削減」については、大規模施設の維持管理費や野放図に進めてきたOA化による諸経費の削減などは当然としても、事務経費の一方的・一律的削減はかえって事務運営に支障をきたすことになり、職場の意見を充分に取り入れるべきである。  「監理団体に対する財政支出の見直し」については、幹部職員の天下りの受け皿となっている必要性の少ない団体の見直しは当然であるが、そこで働く職員の労働条件には充分に配慮し、協議・交渉を保証すべきである。
 (2) 都民向け事業に大ナタをふるい投資的経費の確保をねらう「施策の見直し」
 「すべての施策」が点検・再構築の対象になると述べる一方で、「特に、一般財源の充当額の大きい事業については重点的に見直しを図る」とし「そのことが、結果として、財源確保にも資する」としている。「財源確保」が目的ではないかのような言い方をしながら、「一般財源の充当額の大きい事業」すなわち給与や都民生活関連事業などの経常経費の徹底した見直しが狙いであり、「一般財源充当額の少ない」投資的経費は確保しようとしている。
 経常経費は20%、投資的経費は30%削減とし、一見後者に対する見直しの方が厳しいかのような印象を与えるが、これは「充当一般財源」に対する削減割合であるため、実際の削減額は経常経費1800億円、投資的経費600億円となり、前者が見直し総額の4分の3を占めることになる。
 別紙として列挙された「一般財源充当額が5億円以上」の138事業の大部分は、福祉・医療・教育・住宅など都民生活関連事業であり、青島都政下の「財政健全化計画」実施案で示された30項目をはるかに上回る規模と内容である。
  現に、「プラン」と一体のものとして8月3日に発表された「福祉施策の新たな展開」は、革新都政時代に築かれ都民生活を大きく支えてきた福祉事業の大改悪計画となっている。計画は「経済給付的事業から在宅サービスの整備へ」「サービス利用と負担の適正化」「区市町村が主体となる地域福祉へ」などを打ち出しながら、子育て支援では乳幼児医療費助成・ひとり親家庭医療費助成・児童育成手当、高齢者施策では老人医療費助成・シルバーパス・老人福祉手当・特養ホーム運営費加算、障害者施策では心身障害者医療費助成・重度心身障害者手当・心身障害者福祉手当、などを見直し対象にあげている。事業額で1864億円(99年度予算)、対象となる都民は194万人におよび、「財政健全化」計画をはるかに上回る大改悪計画となっている。
 また、5億円未満でも「一般財源の充当額の大きい事業」、例えば福祉団体への小規模な補助金なども見直しの対象になる。
 「都民ニーズに的確に対応」するのであれば、現行制度によって生活が支えられている都民の要求を最優先すべきである。
 さらに、見直し項目の中には、種々の補助事業や国民健康保険交付金など区市町村財政に大きな影響を与える事業が含まれていることも重大である。
 投資的経費については、「いっそうの事業の重点化をはかる」とし、施設建設の停止・縮小、改築の抑制など住宅・教育施設などからの予算引上げを打ち出す一方で、道路・鉄道など交通基盤や都市開発・再開発には一言も触れておらず、事実上「聖域」扱いとしている。そして、「事業量確保の観点から、国庫支出金の獲得に努め、国庫補助事業の割合を高める」として新たな「東京改造」に重点的に予算を投入することを表明している。これは、石原知事の”東京活性化論”や青山副知事の”首都圏への公共投資万能論”と見事に符号しており、政府・財界の21世紀にむけた”東京改造路線”を推進しようとするものである。
 (3) 不況に苦しむ都民を狙い打ちにした「歳入確保」
 今日、多くの都民は税金の使い道に強い不信感を抱いている。既にこの間の徴収率引上げによって納税者との間に様々なトラブルが発生しているが、長引く大不況のもとでさらに1%、400億円も吸い上げようとすれば、よりいっそう過酷な税務行政とならざるを得ず、都民にとっても職員にとっても苦しみは増すばかりである。大衆課税・大衆徴税の方向ではなく、今こそ法人事業税の超過課税の復元など、莫大な内部留保を抱える大企業に対する負担を求めるべきである。
 使用料・手数料の引上げや減免措置の見直しも低所得者を狙い打ちにするものであり、行うべきではない。
 未利用財産の売却は「臨時的方策」とされ、財務局の計算では売却可能な土地1528億円のうち99年度と2000年度で500億円の売却をめざすとされている。しかし、これらは将来活用すべき都民の貴重な財産であることに加え、現在の不動産市況の下では「苦しまぎれのタタキ売り」となり、財源確保策としても「焼石に水」となる恐れが強い。
 (4) 問題の多い消費税増税頼りの「税財政制度の改善」
 従来から課題としては掲げられていたが、「プラン」で初めて具体的な目標額が明示された。東京都に限らず、自治体の財政危機を克服するためには税財政制度の抜本的改革が不可欠であることから、一面では評価できるものである。
 しかし、その柱が地方消費税の1%引上げとなっていることは重大な問題である。消費税の増税頼りではなく、「プラン」でも試算されている所得税・住民税の国・自治体の配分割合の改善を強く求めるべきである。これは広く有識者からも提案されている現実的な改革案でもある。
 さらに、「富裕団体」とされることによる不当な財源調整措置の廃止に加え、首都であるがゆえの警察費などの過大な負担についても、政府に対し財政支出を求めるべきである。
 法人事業税への外形標準課税の導入は、中小の赤字法人への負担が大きく不適切である。それよりも、大企業に対する法人住民税均等割の累進的引上げなど、大企業に負担を求めるべきである。
 また、「財政再建団体への転落」が自治体の施策を大きく制約している現状から、起債制限ラインを直ちに緩和させるとともに、地方財政再建促進特別措置法の廃止を求めてゆくことも必要である。歳入欠陥が、都道府県は標準財政規模の5%、市町村は20%を超えると起債制限を受けるとされているが、何ら合理的根拠がない。
4 民主的な財政再建にむけて
  現在の戦後第三の地方財政危機の最大の原因は、バブル経済崩壊後の激しい税収の落ち込みにもかかわらず、対米公約である630兆円の公共投資の推進および97年春以降の大不況に対する景気対策として、政府・自治省が自治体財政を大規模な公共事業に駆り立ててきたことにある。それを可能にするため自治省は借金を奨励し、元利償還費の一部などを地方交付税で補填する仕組みまでつくり「公共事業はやりどく」の風潮を蔓延させると同時に、「地方行革」「自治体リストラ」を押しつけ、一方的に住民と職員への犠牲を強要してきた。
 加えて政府は、「財政構造改革法」の「凍結」にみられるように財政運営を大転換し、国債の大増発路線をひた走りはじめており、自治体にのみ従来型の「自治体リストラ」を押しつけることは著しい政策矛盾といわなければならない。
 従って、都財政の民主的再建のためには、何よりもまず、政府のこうした不合理な政策を改めさせ、税財政制度を抜本的に改革することが不可欠である。2000年4月の「地方分権」にむけ地方税財源の確保は全国自治体に共通するさし迫った強い要求であり、マスコミなど世論もそれを求めている。政府の無責任な「先送り」を許さず、絶好の機会を生かさなければならない。かつて革新都政が政府に対し果敢に「財政戦争」を仕掛けたように、今まさにそうした思い切った取組みが必要な時期である。
 そのためには、政府に対し、全国の自治体・特別区はもとより、職員や都民との広範な共同の闘いを構築する必要がある。この点でも「プラン」は、もっぱら職員と都民に対し痛みと犠牲を一方的に強要し、また「役割分担の明確化」の名により区へ財政負担を押しつけようとしており、真の財政再建の道を閉ざすものとなっている。
自治労連都職労は革新都政実現の闘いなど都民が主人公の都区政の確立をめざす取組みの中で、パンフ「許せますか?都政のムダ使い」の発行や都財政、特別区財政の分析と提言などを行ってきたが、あらためて都財政の民主的再建に向けた提言を発表する予定である。
 こうした取組みをふまえ、自治労連都職労は、都民生活の防衛と職員の労働条件の確保をめざして石原都政の方向を転換させる闘いに全力をあげると同時に、都財政再建はすべての自治体の財政再建と一体であるとの立場から、全国の仲間と共同して、また区支部の仲間の力も結集しながら、都財政の民主的再建にむけて奮闘するものである。
以 上