自治労連都職労自治研集会
住民記録問題分科会基調報告
改正住民基本台帳法を考える |
| 2000.9.14 |
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自治労連都職労自治研集会
住民記録問題分科会実行委員会 |
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住民の居住関係の公証や選挙人名簿登録など住民に関する事務処理を目的とした市区町村の固有事務である住民基本台帳事務が大きく変わろうとしている。昨年8月に改正住民基本台帳法が成立して以来1年あまりが経過し、国民総背番号制度の構築は着々と進んできている。自治労連はこの住民基本台帳法改正の旗振り役となった「住民記録システムのネットワークの構築等に関する研究会」が中間報告をまとめた当時から、国民総背番号制・国民監視国家反対やプライバシー保護、住民自治確立などの観点から反対の態度を表明してきた。しかしながら、一部の内容修正はあったものの、全国民にコード(番号)を付番し管理するといった、ほぼ当初の目論見にあった内容で改正法が成立してしまったのである。改正住民基本台帳法の内容については、管理される側(国民)としての立場、民主的運動からの立場、実務担当者(住民記録事務)としての立場など、それぞれの立場によって受け止め方は異なる点もあるが、基本的人権、個人の自由・権利・保護という点においては一致していくべきではないだろうか。この自治研分科会においては、このことを基調にこの法律の内容を学習し、問題点や対応策を把握できることを期待している。
誰のための住基法改正?
改正住民基本台帳法の目的はどこにあるのか、うたい文句である「住民サービスの向上あるいは行政事務の簡素化、効率化」は実現出来るのだろうか。少なくとも今回の改正法によって得られる効果は、そのために必要となる様々な投資や維持管理に比べて大きいものとは言えないのではないか。例えば、住民サービスの向上という点では、広域交付される「住民票の写し」は記載内容が限定されているうえネットワークのサービスを受けるためにはあらかじめ住民基本台帳カードの交付を受けておかなければならないこと、カードには有効期限があり一定期間後廃棄し新しいカードを作らなければならないことなど新たな手続きが必要となっている。サービスによるメリットが少ない上に新たな負担が発生するのである。
行政事務の簡素化、効率化の点でも、国などの機関が本人確認情報を利用できることによる事務量軽減効果はあるにしても、住民記録の窓口においては、従来方式と新方式の届出事務を行うことになる上、住民基本台帳カードの発行交付や住民票コードの付番、通知など事務内容が拡大されることになり、簡素化、効率化が図られる事務がある一方で新たな事務負担を発生させ、むしろ全体としての事務量、負担は増加する可能性が高いのである。また、コミニュケーションサーバ、端末機、プリンタなどの情報処理関連機器を各市区町村へ配置する投資経費や運用経費は全国規模で考えれば相当な財政負担となる。広域交付の住民票一通の費用はどのくらいかかるのだろうか。必ずしも「住民サービス向上、行政事務簡素化、効率化」につながらないのである。
急速な電子化がもたらすものは?
最近はIT革命といって世の中を大きく変えていこうという声が大きくなっている。インターネットの活用、電子的な取引きや決済、電子帳票、電子申請などITをベースとして積極的な開発や導入が進められている。そういった流れの中で改正住民基本台帳法をみるとどうなのか。まず、第一に考えられるのは、役所(行政)情報化(電子化)のインフラとしての役割である。住民基本台帳法でいう「住民に関する事務の処理の基礎」という点では役所(特に市区町村)が行う住民の管理、あらゆる住民サービスの提供などの基盤的役割として活用される可能性はある。しかし、今計画されている新しいしくみでは情報格差(ディジタルデバイド)や個人の選択肢などという点で問題はないだろうか。新しいサービスを受ける場合、住民基本台帳カードが必要でありカードを利用する際には暗証番号(パスワード)が併せて必要となっている。また、自治体によってはカードに複合的な機能を持たせることも考えられる(自治省は推奨している)のである。一方で、カードシステムに馴染めない人、システムに不安を感じカードを持ちたくない人たちなどは、同等のサービスは受けられないことにならないのか。高度情報化が進んでいるといっても現時点では、十分にその機能を使いこなし享受できる人たちばかりではない。むしろ情報化に取り残されていく人とそうでない人とでの格差は拡大する傾向もある。住民となる、住民票を取る、住所を変えるなど基本的なことでも情報化による格差を生じさせてしまうことを自治体として見逃してよいだろうか。今回のような内容でのネットワーク構築を進める前に、高度情報化社会に必要なルール、権力による情報集中・管理などが起こらない、誰でもが情報を共有できる環境の整備が求められているのではないのか。
国が2003年を目指して進めている電子政府構想にあるように、あらゆる手続き、申請、決済などによる情報の電子化が始まっている。急速な電子化は法律やルールの十分な整備が行われず、個人の情報を一元的に管理することへの不安、行政事務の委託や民間事業への切替えなどによって住民の情報が民間部門へ流出されることなど、いわば無防備の状態で個人情報の流通・管理が行われてしまう危険性を持っている。高度情報化社会のために、個人の管理を全国民にコードを付番する方法を国民が選択したことなのか。個人情報の保護することや情報の集中管理、行政による勝手な活用を許さないため、さらには、情報格差による弱者を生じさせないためには、高度情報化社会に対応したルールや制度・しくみを確立させなくてはならない。このような視点からは、この改正法が行政事務のインフラ的存在として位置づけるための十分な措置が図られているとは言えないのである。
ネットワークは国民合意か?
住民基本台帳ネットワークシステムは、その正確な内容、意味が知らされた上で国民の理解を得られているのか。この改正法はそもそも、自治大臣の私的諮問機関として発足した研究会(住民記録システムのネットワークの構築等に関する研究会)が作成した原案から始まっている。研究会の最終報告、自治省が示した改正法案、各界の有識者による懇談会、インターネットによる公開、国会による審議という形で一見開かれた内容で国民に問い掛けているように進められてきた。しかし、国民一人ひとりをコード(番号)で管理することの必要性、将来的なことを含めてどのような目的で、また、どのようなしくみで使うのかということなど具体的に国民へ説明はなかったのである。昨年の国会審議経過においても情報の流通が基本4情報(付随情報、コードを除く)のみであると説明しておき、実際には他の情報も流れるといったことを説明してこなかった(隠していた?)事実を見ても分かるように、正しく説明されていないのである。さらに、事務の主体となる市区町村に対しても正確な情報や計画内容などはなかなか知らされず進めてきたのである。国・自治省が独断的に進めてきた事実である。国民や地方自治体などを軽視して全国ネットワーク、総背番号制の実施に邁進し、民主的な方法を否定していることは許されないのである。
総背番号制は安全か
この住民基本台帳全国オンラインシステムは「安全」なものであるのか。システムの安全性はハードウエアの問題やネットワーク管理の問題として論議されることが多い。確かに重要なことではある。しかし、国民の立場からすればパスワードやファイアウォールなどの技術面での安全性を強調されるばかりではなく、個人情報保護のしくみが万全か、人権侵害が行われないかなど情報収集の目的や使われ方に「安全」を求めていくことが重要なことではないだろうか。政府は昨年の住民基本台帳法改正に関する国会質疑の中で、「個人情報保護のあり方について法整備を含めたシステムを速やかに整える」と答え今年1月には「個人情報保護法制化専門委員会」を設置し個人情報保護を積極的に取り組み姿勢を見せている。しかし、基本的人権の視点で個人情報保護のシステムが構築できるのかは疑問である。現在進められている個人情報保護法の考え方は、公的分野、民間分野などを個々の法律によって規制する方式を採ろうとしている。そのため、個人情報保護の意味が曖昧になる危険性がある。今回の住民基本台帳ネットワークの構築にあたっても、住民サービスの向上、行政事務の効率化という理由で進められ、まず個人を一元的に管理するしくみをつくりあげて、その使い方は法律や規則によって規制するとしている。国民総背番号制によるプライバシーへの影響、国民監視社会への危険を冒してまで制度を導入することの意味や目的が必ずしも明確にされていない。どんな口実であっても法改正さえ行えば、国民の個人情報をコントロールできるシステムが作られようとしているのである。そこには、個人情報保護ということが誰のために、どんな事に対してあるのか見えてこないのである。
このまま進むわけにはいかない
現在の進め方で、開発・実施を行うとすれば自治体の担当職場では混乱が起きる可能性があるのではないだろうか。その理由は、とにかく市区長村の現場サイドの意見が反映されない、自治省、都道府県、または業者(地方自治情報センター、情報関係業者)のレベルのみで事が決定されている。法律制定以前から質問や意見などが自治体からあがっていたにも拘わらず、適切な対応を行ってきていない。最近、市区町村向けに説明されたシステム基本設計によれば住民基本台帳カードによる転出・転入事務、住民票広域交付などを有効に行うためには、窓口事務の拡大が必要であったり、市区町村間の連携を強化しなければ円滑な運用が保てないのではないかと指摘する点もある。さらに、システム導入にまでには多くの未解決部分があるのではないか。住民基本台帳事務を行う職場においては、2〜3年後に始まる業務がはたしてどのような形態となるのか、窓口の体制はどのようにすべきか人員・予算は確保できるのか、また、新しいしくみが住民に正しく理解され納得したかたちで受け入れられるのかなど、不安定材料が散在している状態である。本当に、住民サービスの向上や行政事務の簡素化・効率化を進めるためには、まず国民や自治体職場にすべての情報を公開していく必要がある。そして、本来の目的は何なのか、国民管理、監視に使われない保障があるのか、本当に必要なシステムなのかなど検証し、意味のないもの、問題点が解決しないものは法律改正も視野に入れて再検討すべきではないだろうか。情報の公開がされず執行主体の欠けたまま、開発、システム構築を行うのは問題である。 |
| 以 上 |
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